可愛い子なのだが、先生と対等なのである。「先生、講義のまえに冷房入れておいてね。」とよく言う。今日も「冷房利いてる?」が挨拶だ。
 
 本人に悪気はないが、僕の年代ではこの口調は「用務員のオジサン」に対する口調である。「ギンギンだよ。」と僕も流す。

 講義に入ると「寒すぎ」と背中を丸める。そのうち、隣との会話に夢中になり、僕が「御嬢ちゃん。」と呼びかけても耳に入らない。3度目に「出て行って」と言うと

 「なんで私が。」と気が付かなかった可愛い子ぶりっ子する。若い男の子はだませても、この僕の爺さんにそれは通じない。
怒ると疲れるが、誰も止めに来てくれない。

 また怒ってしまった。本音は「誰か止めに来い。」なのだが。

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